うそつきなあなたへ

「今もすやすやと眠っている。何も知らないかのようによく眠っているんだ。そして、すぐにでも目を開けて僕に笑いかけるんじゃないかって。今でもそう思うんだ。だけど、現実はそうじゃない、もう永遠に目を覚まさないんだ。

そこにいるのに、触れられないもどかしさ。会いたいと願っても、この声は届かないんだ。ずっと、好きだと思っていた。でも、違った。
僕は愛していた。心の底から愛していた。
何もしなくていい、ただずっと僕の傍にいてくれたらいい。
そこで笑ってくれていたら僕はそれだけで満足だった。

けれど、もともとの原因を作ったのは、僕だ。
僕は、父上の言いなりとなり、国を離れた。逆らうのが怖かった。自分の感情を押し込めて父上の決めたことに従っていた。従っていることで、自分が選択することがなくなり、楽だった。
けれど、それが事態を招いたのだ。もし僕が自分の意思で自分を動かしていたら、2人ともこの絵のように、まだ笑っていたかもしれない。

そして僕は、この気持ちを伝えていただろう。
“愛している”と」

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