うそつきなあなたへ
強めのノックが4回。その音で、少女は心臓をギュッと握りつぶされたかのような気持ちになりました。それが、王子の腕に伝わったのか、王子は「心配しなくていいよ」と少女に笑いかけてから、応答しました。
「夜分遅くに申し訳ございません。王子、南の門番から援護の要請が届きました」
その言葉で、王子は優しい顔から一変して険しい顔になりました。
何が起ころうとしているのか、少女には全くわかりません。
少し考えてから、王子は言いました。
「少し時間をくれ。その間に、私の馬と装備を用意して数名は正門で待機だ」
使いがすぐさま出ていくと、王子は少女と向き合い言いました。
「僕は、少し出かけてくる。姫は、この部屋の奥にある隠し扉からそこから外に出るんだ」
「嫌だ、待って。私は自分だけが逃げることなんてしたくない」