うそつきなあなたへ
「おじさんは? 何をしている人なの?」
「おじさんって言うな。まだお兄さんって年齢だ。俺は、旅人ってところかな」
「じゃあ、歌を歌えるの?」
「俺は、吟遊詩人じゃない。歌は歌えねぇよ」
「そう。私が出会った吟遊詩人はとても素敵な歌を歌うの」
「へー そうかい」
その言葉で、会話が途切れて2人の間には、沈黙が流れていきました。
少女は、正直なところとても気まずくて、一刻も早くここを離れたいという気持ちでしたが、彼は命の恩人です。失礼なことはできないと思い、ジッとたき火を見つめていました。
「飲むか」
そういって旅人は、自分の傍にあったビンをひとつ少女に投げました。それを受け取った少女は、蓋をあけて飲んでみました。それは、村で飲み慣れた味でした。