うそつきなあなたへ
「そんなの、話したら分けてくれるかもしれないわ」
「あんたは分かっていないね、俺は、ただの浮浪者だ。そんな身分もわからない人間にほいほい分けてくれるわけないだろ」
「じゃあ、あなたはそれを返すつもりはあるの」
「あるよ、今は腹の中におさまっているけれど。いつかはね」
「それ、泥棒と何も変わらないじゃない」
少女の中で、怒りがふつふつと湧いてきました。
この人は、どうしようもないクズだと思えてきました。
「あんたは、まだ幼いからわからないけれど生きていくためには、必要なことなんだよ」
「じゃあ、こんなところで呑気に飲んでないで、少しは仕事を探して働いてみたらどうなの」
「甘いな。あんたの頭の中は、相当甘い。蜂蜜より甘い」
お酒を飲み干して、旅人はケラケラと笑いました。
彼の行動一つ一つに、腹が立ってきます。