うそつきなあなたへ
「そんなのおかしいわ…おかしい」

「俺も、おかしいと思うさ。けれど、口に出した瞬間に異端者扱いにされて追放される。追放まで行かなくても、ひどい仕打ちを受けるだろう。それなら、ただ黙っていたほうが身のためだ。あんたが振りかざしている正義だっていつかはあんたに牙をむくよ」

「でも、やっぱり泥棒はいけないことよ」

「ああ、そうだな。けど、もし俺が食料を借りていなけりゃ、あんたはもとの世界に戻ることもできないまま、道の真ん中で死んで動物のエサになっているぞ。それでもいいのか」

その言葉に、少女は何も言えなくなりました。
何も知らなかったとは言え、旅人に助けられてその食料でお腹を満たしたのは事実です。もし、彼が盗ってきた食料をくれなかったら飢え死か動物に食べられていたでしょう。


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