うそつきなあなたへ

「あと、一つ言い忘れていたことあったけど」

そう言うと、旅人は立ち上がりながら少女の腕を引きました。

「人と違うことしたりズルしたりするってことは、多少のリスクと責任を引き受けなくてはならないということだ」

突如、頭上で笛が鳴り響きました。

「とりあえず走れ!」

少女は、何が起こったのか分かりませんでしたが、旅人の言うとおりに走り出しました。旅人は、少女の腕を掴んだまま全速力で走ります。
後ろを振り向くことは、出来ませんでしたが誰かが追いかけてくる気配を感じました。

「ちくしょー、夜ぐらいいい子でねんねしやがれ」

「おじさん、あの人たちに追いかけられているの?」

「まあな、ちょっとだけ俺についてきてくれるか」

少女は、旅人の言う通りについていくことにしました。
2人の足音が、夜へ消えていきます。
しばらく走っていると、森の出口が見えてきました。
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