ブスも歩けばイケメンに当たる⁉
「…車って、楽チン~、ステキ~」
「…桜子って、ホント、俺の回りにはいないタイプだよな」

そう言って、クスクス笑う榊さん。

「…そりゃあ、私は綺麗でもないし、可愛くもないし、性格も子供っぽいですよー」

車の窓を全開にして、ブーたれた。

…パチン!

車を運転中のはずの榊さんに、また、おでこを叩かれた。

バッと榊さんを見ると、前は向いたまま、不機嫌顔。

「…叩いたくせに、なんで、怒ってんですか!」
「…褒めたのに、そんな態度とったから、お仕置き」

「…榊さん」
「…躾はちゃんとしないとな?」

「…私は、榊さんのペットじゃありませんよ!」
「…あ、それいいかも」

…口では、この人に勝てる気がしない。

私は溜め息をついて、だんまりを決め込んだ。

…車は、いつの間にかパーキングに停まっていて。

私達は、お互い、別々の道を行き、会社に向かった。

…榊さんは、一緒に出社すると、駄々をこねたが。

断固拒否した。

…月日が過ぎるのは早いもので。

幸せな日々は、あっという間に終わってしまう。

お姫様の時間はもう残りわずか。

三日後の診察が終われば、魔法は溶け、平穏な日常が戻ってくる。

「…そうだ。平穏な日常が、戻ってくる。美味しいご飯も(え、そこ?)車の送迎も(いやいや)刺激的な毎日も(刺激的なって、おでこを叩かれることね)…」

悶々としたまま帰宅すると、夕飯を作り、お湯を張り、部屋の片付けもした。

もう、いてもらう理由なんて無いんだよね。
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