ブスも歩けばイケメンに当たる⁉
ドギマギする私を他所に、榊さんの顔が近づく。

やっぱりからかわれてるとしか思えなくて、段々悲しくなってきて、榊さんの顔が目の前まで来る頃には、ポロポロと涙が流れた。

榊さんは、ハッとして、動きを止める。

私は、顔を覆って、震える声で言った。

「…こんなことやめてください」
「…桜子」

「…私をからかって楽しいですか?」
「…そんなつもりは全くない」

「…私は、ブスですけど、そんなに安くないです」
「…さっきも言った。桜子は可愛いよ。安いなんて思ってない」

「…じゃあ何でこんなことするんですか?」

グスン。グスン。と鼻をすすっていると、私の手の上に、榊さんが手を置くと、ゆっくりとその手をのけられた。

「…見ないでください」
「…桜子、聞け」

「…やです」
「…俺はお前が好きだ」

…ぎゅっと閉じていた目が勝手に開く。

真っ赤な目で、榊さんを見た。

榊さんの目は、とても真剣で、冗談や嘘でそんな事を言ってるような感じじゃなかった。

「…全然着飾らない桜子が好きだ」
「…身だしなみがだらしなくてすみません」

「…喜怒哀楽をしっかり出す桜子が好きだ」
「…男慣れしてないので、どうしてもそうなります」

「…考えが後ろ向きだと、いじめたくなる」
「…ホント、いじめますよね」

「…好きだから、いじめたくなる」
「…」

「…1ヶ月一緒に居て、こんなに居心地のいい女は、桜子が初めてだよ。ホントに」


…いつの間にか涙は止まってた。

ずっと、好きだって言われ続けて、頬は火照り、困ったような笑みを浮かべた。


「…その笑顔が何より好きだ」
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