ESCAPE
アタシが、このヘルスで働き始めたきっかけは、スカウトだ。当時サーバ会社で事務職をしていたアタシは、日々の退屈な生活に耐え切れず、3年連れ添ったオトコにも愛想をつかされ、歌舞伎町のホストクラブに入り浸っていた。月収18万の身で、週末のたびに3万、5万、時には10万と振舞っていたら、あっという間に貯金も底をついた。故郷札幌で、高校、短大と、たいして遊びもせずコツコツ貯めた200万円の貯金は、全て歌舞伎町のゴミタメみたいなドブの中に消えていった。時給650円で、毎日おばさんたちに混じって、レジスターをガチャガチャしていたあの日々は、一体なんだったのだろう。ダメな自分を弄んでくれたのは、さらにダメな男たちで、お金がないのをわかっていいながら、いい香りをプンプンさせたウルフヘアーで甘い言葉を次々とささやいていった。わかっちゃいるけど、やめられない。アタシはお金がなくなると、運転免許証片手に黄色や赤の看板の扉を開いていき、貯金はあっという間に、マイナス200万となった。そんな折、歌舞伎町で泥酔したままアルタ横でふて寝していたアタシ。キリキリと痛む胃袋に耐え切れず、ゲーゲー寝たまま嗚咽していると、「大丈夫?」と液キャベを持ったリュウさんに声をかけられた。礼を言って、液キャベを受け取ると、リュウさんは開口一番こう言った。
「仕事も家も紹介するよ。」
それが、まだ寒さの残る二年前の4月。液キャベ一杯でスカウトされたアタシは、そのまま寮に住み込み歌舞伎町のオンナになった。気がつけば、28。もう、夢見る少女じゃいられない、そんなのわかってるって。アタシはそんな風にまた、開き直り、恵美子に向かって「そうなのぉ。めっちゃ嬉しい」と笑顔をみせた。アンドロイド、冷血漢、コピーロボット、クローン人間、物真似ザル、マネキン人形…今のアタシを現すのに、一番相応しい言葉はナンなのだろう。
「仕事も家も紹介するよ。」
それが、まだ寒さの残る二年前の4月。液キャベ一杯でスカウトされたアタシは、そのまま寮に住み込み歌舞伎町のオンナになった。気がつけば、28。もう、夢見る少女じゃいられない、そんなのわかってるって。アタシはそんな風にまた、開き直り、恵美子に向かって「そうなのぉ。めっちゃ嬉しい」と笑顔をみせた。アンドロイド、冷血漢、コピーロボット、クローン人間、物真似ザル、マネキン人形…今のアタシを現すのに、一番相応しい言葉はナンなのだろう。