ESCAPE
待機場から地上へと続く急勾配の階段を下りていく。日曜日の朝。白光がまぶしい。普段はネクタイを揺らせたサラリーマン達の通勤ラッシュが続いていくのに、今日は、時折カラスがむなしくゴミをあさっている程度だ。歌舞伎町の奥底の、ラブホや個室ビデオ屋から姿を現す、リーマンなんてロクな人間はいないだろう。だから平日の朝のアタシは、彼らと、OL時代の自分に向かって毎朝「合掌」をしていた。だけど、日曜日の朝。誰もが眠り、道端のカラスや、くたびれたキャバの店員が「さっ、いかがっすか。」と声をかける姿を見ていると、自分のカラダにやりきれない鬱憤が沸々とたまっていくのがわかる。アタシは気分を変えるために、処方されているアモキサンとワイパックスの錠剤を口の中に放り込み、ウーロン茶でゴクリした。
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