ラズベリーな恋模様(A・T)
つい、うっ…と声を漏らしてしまうと、灯は、
「そっか、苦手だったんだ。なら、早く言ってよ。違うの乗ろうぜ」
と言って、長蛇の列から抜けようとする。
「えっ、ちょっと待って!」
慌てて、私はその腕を掴む。
「なに?」
「お化け屋敷、入らないの?」
「いや、だって冬穂、苦手なんだろ?」
何を言ってんだ、と言うような目で私を見る灯。
「そ、そうだけど……」
「じゃあ、いいじゃん。違うのでも」
「ともは、良くないでしょ?」
私は灯の目を見つめる。
灯は少し驚いたような顔を見せた。
私は続けて、
「今日は、クリスマスイブだよ。ともにとって、楽しいなって思えるイブにしたいもん。それに、元々これを目的に来たんだし」
「冬穂、もしかして……」
灯は何かを察したようだったが、その言葉の続きは言わなかった。