ラズベリーな恋模様(A・T)
現在の時刻、六時五十分。
私達はベンチに座って、ツリーが点灯するまで待つことにした。
クリスマスツリーを見つめていると、ふと、灯が口を開いた。
「去年の今日、俺、マジで必死だったなあ」
「……ごめんね」
「だーから!冬穂が謝ることじゃないって!」
「うん、だけど……」
「俺さ、あの日はずっと、どうしたら冬穂が笑ってくれるかな?とか、どうしたら冬穂は俺の方向いてくれるかな?とか、そんなことばっか考えていた」
灯はツリーを見つめながら話し始める。
私は静かに、その話に耳を傾けた。
「でも、今日は違う。ずっと、冬穂が隣にいてくれて幸せだなーって考えていた」
へへっと、照れたように笑った灯に、私も微笑む。
「…私も、去年はずっと、ともの傍にいていいのかな?って考えて、罪悪感でいっぱいだった。でも今年は、本当に楽しかったよ」