ラズベリーな恋模様(A・T)
「本当に?」
「うん!」
「本当は今日ずっと、去年の上書きしようとしてたんじゃねえの?」
「えっ?」
灯は優しく笑いながら、よく分からないことを言った。
私は首を傾げる。
「俺に楽しんでほしい、とか、去年の償いしようとしてるのかなーって思ってたんだけど、違う?」
「それ、遊園地で言いかけてたこと…だよね?」
灯が察したのは、やっぱり、このことだったのか。
そうだ。
私はずっと、去年のことを考えていた。
去年、あんな酷いイブにしちゃったから、今年は楽しませてあげたい。
そう、思っていた。
「……その通りだよ。今年は、良い思い出でいっぱいのイブにしてあげたかったの。でも、楽しかったのも嘘じゃない」
私はほんの少し俯く。
去年のあの日の罪悪感を、また抱いたからだ。