ラズベリーな恋模様(A・T)



「俺、なんか飲み物買ってくるわ」
「あ、ありがとう」
「じゃあ、行ってきまーす。あっ、今日はどっか行くなよ?いきなり消えるなよ?」
「ははっ、分かってるよ。大丈夫、消えたりしないよ」


もう、灯の傍を離れたりなんかしない。


灯も冗談で言っているため、楽しそうに笑うと、自動販売機の方へ歩いて行った。



圭汰は今、誰と一緒にいるのかな?
誰を想って、聖なる夜を過ごしているのかな?


容易に想像できる疑問の答えを考えても、もう痛くない。


圭汰は今、奥さんと、そして奥さんのお腹の中にいる子どもと一緒にいる。
そして、二人のことを愛しく想って、聖なる夜を過ごしている。


そして、私も。
灯のことを想って、今日を過ごしている。



「冬穂、ただいまー」
「あっ、おかえり、とも」
「見て見て!期間限定!ラズベリージュース!!」

灯は自慢気に買ってきたジュースを私に見せる。


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