ラズベリーな恋模様(A・T)
「えっ、まずそう」
「はっ!?いやいや、どう考えても美味そうじゃん!」
「えー、ないわー」
「絶対美味いって!飲んでみ?」
灯に渡されたジュースのキャップを開ける。
どうしてこんな意味不明なものを…と呆れながら。
どうやら灯は、期間限定という言葉に弱いようだ。
「ってかさ、どうしてジュース一つしか買ってきてないの?」
「えっ?ああ…一緒に飲もうと思って」
「一緒に、って……」
それってつまり、間接キスするってことだよね。
いや、いいんだけど。いいんだけども!
「へ、へえ……」
私はジュースを一口飲んだ。
もちろん、
「うわっ、まず」
「え、」
予想通り、まずい。すごく。
「嘘だって!ちょ、貸して」
灯は私の反応を、あり得ないとでも言うように、私の手からジュースを奪って、それをゴクリと飲んだ。
ものすごーく自然に間接キスした灯を、私はじっと見つめる。