幕末☆妖狐戦争 ~九尾の能力がはた迷惑な件について~
 現在、私は多分きっとおそらく社の外にいる。

 九尾の狐のレクチャーの元、さっき妖術で扉を破壊して階段を降りた記憶があるから。

 しかし階段が怖い!足の裏の感覚ない、しかも目も見えない状態で段差を上り下り、特に下りるときってめっちゃ怖い!

 だって着地してるかしてないのか、判別が微妙にしにくいんだもん!足の裏には何も感じないから!

 あ、ちなみに去り際にさらっと判明したのだが、妖術を用いれば狐さんのレクチャーがなくても自動で着替えを手伝ってくれるらしい。

 妖術って、怪しいイメージしかなかったけど、なんだこのものすごく便利な機能は。実に素晴らしい!

 むしろ王道RPGファンタジーで言う魔法、ぐらいに便利なものだね。

 多分森の中(九尾の狐曰く森の獣道を進んでいるらしい)を進みながら、九尾の狐は彼女(?)たちについて話してくれた。

『まず、妾は妖狐を束ねる長のようなものじゃ』
(長?妖狐って、まだいるの?)
『おるぞ。この国には妖狐が9匹おる。一尾から九尾までの9体じゃ。それぞれ尾の数だけ命と能力を持っておる』

 どうやらこの国には、妖狐が全部で9体いるらしい。もしかして一尾から九尾の9体だったりして?

(それはなんとなくわかるわ)
『そして、その狐を祀って暮らす里もまた、全部で9つあるのじゃ。全て人里離れた山や森の奥じゃがな』

 確かに、こういうすごい力を持った存在を祀るんだったら、普通隠れるよね。その力を利用されないため、とかいろんな理由で。

(あ、もしかしてこの入山の里って、九尾の狐を祀る里?)
『お主、敏いのう。そうじゃ、あやつらは数千年も前より妾を祀って暮らしておる』
(じゃあなんで嫌ってるの?むしろ家とか家族みたいなものじゃん)

 あの入山の里っていうにが九尾の狐の里なら、九尾の狐はなぜそこから出て行こうとしているのだろう?

『もちろん、昔は妾もあの里を好いておった』

 九尾の狐の(心の声の)声音が悲しそうな空気をまとった。

『里人と一緒にのんびり暮らしていたあのころは楽しかった』
(ならどうして)
『最近の里人は気が触れておるからじゃ。奴らは妾の力を手に入れて、国を征服しようと考えておる』

 征服!?マジか!?

『すでに察しているかもしれんが、妖狐の中で妾が群を抜いて最強じゃ。だから里人はその力を手に入れて、操って、世界を我が物にしようと画策しておるのじゃ』

 うん、その力を今自分が持っているからよくわかるよ。こんなすごい力があったら、日本征服とか余裕でできちゃいそうだもん。

『奴らは毎月満月の夜に、妾に生贄を捧げるようになった。お主のように、妾の力を得られるような人間を作り、その人間を懐柔し、国を乗っ取ろうとしておるのじゃ』

 なるほど。私はただそれだけのために命を粗末にさせられかけたのね。

(よし!今すぐここを離れよう!全力でここから離れよう!!)

 私は即座にそう決意した。
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