幕末☆妖狐戦争 ~九尾の能力がはた迷惑な件について~
「どんなギャグ漫画よ」

 さっきまでに起きた頓珍漢すぎる出来事を思い出しながら、私、御影 雫(みかげ しずく)は思わず突っ込んでしまった。

 いや、これはきっとしょうがない。誰だって玄関からフリーフォールして見知らぬ森に来たら突っ込むに決まってる。

 ちょっと神様たるものがいるのなら抗議しに行きたいと本気で思った。

 どこの森かは知らないが、周りは真っ暗だし、地味に寒いし、誰もいないし。いや、本当にここどこ?

 とりあえず状況整理をしてこの森から出よう、と思っていると、遠くに松明の光のようなものが見えた。

 え?松明?

 二十一世紀に松明とか存在するの?いや、存在はしてるだろうけど、使ってる人とかいる?そこは普通懐中電灯じゃないの?

 私が脳内ではてなマークをつけまくっている間に、向こうの方が私に気づいて寄ってきた。

 どこか落ち武者みたいな見た目の男三人は、私を見てこれでもか!っていうほど驚いた。

 いやいや、びっくりなのはこっちだって。

 全員男性だったのはまあ、別にいい。

 しかしなぜにみんな和服を着てるんだ?洋服は?いくら山奥だからって、二十一世紀に着古してるっぽい着物はないんじゃないの?

 まさかみんな洋服持ってないの?すいませんが私はみなさんに渡せるような男物の服なんて持ってないぞ?

「あの…………」
「なんだ?この奇妙な服装の女は」
「顔立ちも、俺たちの知ってる女性とはずいぶんと違うぞ」
「どっかで捨てられたのか?」
「は?」

 私がしゃべる前に、男性たちが何やら相談会を始めた。私の服は奇妙なのか?私からすれば皆様の格好の方が奇妙なんだが?

 イヤイヤその前に捨てられたって何?

「おい、女。どこから来た。家はあるのか?」
「まずここはどこですか?」
「入山の里の近くの森だ」
「この場所を知らないとは……これは家がないんだな。捨てられたか」
「でも、ちょうどいいんじゃないか?」

 え?ん?この人たちなに言ってんの?なんで今の返答で私が孤児(みなしご)みたいな解釈に至ってるの?

「捨てられているのなら話は早いな」
「許可を取る必要もないし」
「何より使い勝手がいい」

 ちょいとー!ぶっ飛びすぎてるよ?そんなことひとっことも言ってないんだけど。そしてなんか不穏な単語が聞こえたぞ!

「長月が近い今宵の儀式は特に危険だ。このまま儀式を見送るのかと思っていたが………」
「この人間に生贄になってもらえば全て丸く収まるだろ」
「この者ならいなくなっても誰も困るまい」

 長月って、9月のことだよね………じゃなくて!!

 は?なんだって!?生贄!?しかも発言が怖い!!

「あの!ちょっと!」
「これで村長は静かになるだろう。彼の娘が生贄にならずに済んだんだからな」
「早くこの娘を連れていかないと。儀式に間に合わなくなる」
「ああ。儀式はもう今夜だ」




 ちょっと人の話を聞けってのーーーーー!!!!
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