幕末☆妖狐戦争 ~九尾の能力がはた迷惑な件について~
10分後。
「やっと切れた」
手の縄をほどき、さるぐつわも外し、私は一息つく。
今さっき、社の柱から飛び出ていた頑丈な棘で縄を切ったところです。
しかし手が自由になったのはいいが、私はなんつー環境に置かれてるんだ。
普通にバイトから帰ってきて家に入ろうとしただけのはずなのに、なぜ回り回ってこんな得体のしれない場所で九尾の狐とやらの生贄をやってるんだ。
つーかどうやって出よう!?
着させられた十二単もどきはガサガサと邪魔で動きづらいので脱いだ。なので今、私は白い小袖一枚である。
え?寒くないのかって?室内だからなのか、そんなに………。
扉まで行って扉を押したり引いたりしたが、びくともしない。ボロい社のくせに生意気な!
社に八つ当たりしても意味ないか。だがやはり八つ当たる!
しかし力のない私には扉を突き破ることはできなかった。何か道具を探した方がいいかもしれない。
そう思ってあたりを見渡したが、扉を破れそうな道具はなかった。
あったのは小さな衣装箱と小物入れだけで、あとは食べ物が備えられた棚。あれは………お供え物か何かかな?
そういえば今って何時だ?着ていた服は剥がされちゃったから、ポケットに入ってた懐中時計も持っていかれちゃったんだよね………。
って腕に腕時計がついてるじゃん。ラッキー。多分外し方がわからなかったんだろうね。
入り口の扉は上半分が障子張りであるので、半透明の和紙からうっすら外の月光が社の中に入ってきている。
その光を頼りに腕時計を見る。文字盤の針はきっちり午前2時を差していた。
うわ……嫌な時間。丑の刻じゃん。お化けが跋扈する時間だよ。
あ、別にお化けを信じてるわけじゃないから。むしろ怖いもの大好きだから。この間も友達と真夜中の墓地に行った人だから。
楽しくて途中から一緒にいた友人をおどかしてニコニコしてたもん。
友人には「お前の方がよっぽどお化けだ!」とか言われたけど。んな失敬な。
つーかお化けで思い出したんだけど(別に忘れてたわけじゃないが)。
九尾の狐って本当にいるの?あれって、ただの怪談でしょ?安倍晴明のお母さんとか、紂王の妃とか言われてるけど、それも伝説でしょ?
そんなもの実際に存在するわけないで…………。
ミシリ。
え。
今……なんか後ろから聞こえたんだけど…。
私はゆっくり、ゆーっくりと、恐る恐る、錆びた機械のように動かない首を動かし、自分の後ろを振り返る。
そこには一匹の狐がいた。大きさは私の座高ほど。相当デカい狐だ。
薄暗い上に月光があるせいで何色か判断つかないが、毛はフサフサしていて、テカっている。良い毛並みですねー。
そしてその狐は、九本の尻尾と金色の目を持っていた。
「やっと切れた」
手の縄をほどき、さるぐつわも外し、私は一息つく。
今さっき、社の柱から飛び出ていた頑丈な棘で縄を切ったところです。
しかし手が自由になったのはいいが、私はなんつー環境に置かれてるんだ。
普通にバイトから帰ってきて家に入ろうとしただけのはずなのに、なぜ回り回ってこんな得体のしれない場所で九尾の狐とやらの生贄をやってるんだ。
つーかどうやって出よう!?
着させられた十二単もどきはガサガサと邪魔で動きづらいので脱いだ。なので今、私は白い小袖一枚である。
え?寒くないのかって?室内だからなのか、そんなに………。
扉まで行って扉を押したり引いたりしたが、びくともしない。ボロい社のくせに生意気な!
社に八つ当たりしても意味ないか。だがやはり八つ当たる!
しかし力のない私には扉を突き破ることはできなかった。何か道具を探した方がいいかもしれない。
そう思ってあたりを見渡したが、扉を破れそうな道具はなかった。
あったのは小さな衣装箱と小物入れだけで、あとは食べ物が備えられた棚。あれは………お供え物か何かかな?
そういえば今って何時だ?着ていた服は剥がされちゃったから、ポケットに入ってた懐中時計も持っていかれちゃったんだよね………。
って腕に腕時計がついてるじゃん。ラッキー。多分外し方がわからなかったんだろうね。
入り口の扉は上半分が障子張りであるので、半透明の和紙からうっすら外の月光が社の中に入ってきている。
その光を頼りに腕時計を見る。文字盤の針はきっちり午前2時を差していた。
うわ……嫌な時間。丑の刻じゃん。お化けが跋扈する時間だよ。
あ、別にお化けを信じてるわけじゃないから。むしろ怖いもの大好きだから。この間も友達と真夜中の墓地に行った人だから。
楽しくて途中から一緒にいた友人をおどかしてニコニコしてたもん。
友人には「お前の方がよっぽどお化けだ!」とか言われたけど。んな失敬な。
つーかお化けで思い出したんだけど(別に忘れてたわけじゃないが)。
九尾の狐って本当にいるの?あれって、ただの怪談でしょ?安倍晴明のお母さんとか、紂王の妃とか言われてるけど、それも伝説でしょ?
そんなもの実際に存在するわけないで…………。
ミシリ。
え。
今……なんか後ろから聞こえたんだけど…。
私はゆっくり、ゆーっくりと、恐る恐る、錆びた機械のように動かない首を動かし、自分の後ろを振り返る。
そこには一匹の狐がいた。大きさは私の座高ほど。相当デカい狐だ。
薄暗い上に月光があるせいで何色か判断つかないが、毛はフサフサしていて、テカっている。良い毛並みですねー。
そしてその狐は、九本の尻尾と金色の目を持っていた。