幕末☆妖狐戦争 ～九尾の能力がはた迷惑な件について～

「………う……」

　頭にひどい痛みを感じて、私は目を覚ました。うえ。気持ち悪い。

「……………あれ？」

　パチパチと目をまたたいて、私はガバッと起きる。どうやら私は気絶していたらしい。

　おや？

　おやおや？

　私、生きてるよ？さっき思いっきり九尾の狐に飛び掛られたのに、体にも服にも傷一つない。

　え、マジで？夢じゃない？




　ほっぺを引っ張ってみた。

　痛い。夢じゃない。

　今度はほっぺをつねってみた。

　痛い。やっぱり夢じゃない。




　うん、頭がガンガンに痛いのが夢じゃない何よりの証拠…………だと思いたい。

　そういえばこんなことしてる場合じゃなかった。九尾の狐はどこへ行った？私に殴り飛ばされちゃったであろう九尾の狐はいずこに？

　あたりを見渡すが、九尾の狐の姿は見えない。隠れている気配もない。

　ん？あれ？私が気絶してる間に何が起きたの？すいません、誰かこの状況を解説してくれないかな？

　私には自分が九尾の狐の顔面ぶん殴った記憶しかないんだけど。

　痛む頭を抑えながらふらりと立ち上がり、私は九尾の狐を探しに社の真ん中まで行く。

　うーん……どこにもいないな……。巣に帰ったのかな？

　あれ？でもここって九尾の狐の社だから家はここなんじゃないの？




　あれ？こんがらがってきた。




　しかし頭痛がひどい。頭痛薬が欲しい。いや、今持ってないけど。

　社からは出れないし、肝心の九尾の狐もいないし、どうしたらいいかわからず右往左往していると、上から何かが降ってきた。

　とっさにそれを受け止めてしまい、私はちょっとバランスを崩して地面にへたり込む。

　受け止めたそれをみると、なんとそれは一匹の黒猫だった。

　え？なんでこんなとこに猫がいるの？さっきまでいなかったのに、もしかして九尾の狐に驚いて落ちてきたのか？

　いやいや、落ち着け私。それにしちゃあ時間経ちすぎだから。九尾に驚いたんならもっと早くに落ちてくるよ。

　ふと、目の前の祭壇に備えられている鏡のような物体が目に入った。薄暗い社の中で、わずかな月光を反射して鈍い光を放っている。

　外の月光もあって社の中はぼんやり明るいから、視力がそんなに悪くない私には鏡の光景がなんとか見えた。

　そこには私が映っていた。

　真っ黒い髪は腰まであって、顔立ちもそこそこってレベルぐらいで平凡。なんの変哲もない、いつもの自分だ。




　………一ヶ所だけを除いて。




　鏡に映った私の瞳が、このほの暗い社の中でまるで発光しているかのように不思議な金色に染まり、淡く輝いている。

　そしてそれは、さっき見たばかりの九尾の狐の瞳とまったく同じものだった………。




「嘘でしょーーーーー！！！！」

　丑の刻の社に大絶叫が響いた。