幕末☆妖狐戦争 ~九尾の能力がはた迷惑な件について~
 ちょっと、今私は良くない何かを聞いた。

(どういうことでござりましょう?)
『言葉の通りじゃ!お主は妾の力を根こそぎ吸い取った。だから今はお主に9つの命が与えられておるのじゃ』
(……………)

 なんつーはた迷惑な能力なんだ。

『何がはた迷惑だ!妾の力を奪っておいてその言い草はなんじゃ!』
(うん、さーせん。私に言われても困るけど)
『それ以外にも、お主にはいろんな人外要素が加わっておるのじゃぞ』
(は?人外?私魔王になるつもりは毛頭ないんですが?)
『まおう、とはなんじゃ?』
(あ、どうぞお気になさらず)
『…?まあよい。良いか、今お主は妾の持っていた無限とも呼べる膨大な力を全て持っておる。具体的にいうと妖力、妖術の才能、千里眼、順風耳、再生能力、言語理解、空腹無効、疲労無効、天才頭脳の9つじゃ』

 ほうほう。これだけでもうすでに十分人外だね。

『しかしお主は人間じゃ、何千年も生きた妖狐である妾の力を吸収して無事でいるわけがない』

 ………なんか、ヤバそうな雰囲気。この先は聞いちゃいけない気がする。

『お主は妾の力を得た代償に人として最も大切なものを9つ失っておる。視覚、聴覚、味覚、臭覚、触覚、言葉、死への恐怖、残酷行為への躊躇、人への優しさ。これらのものが、今のお主には備わっておらぬ』

 やっぱりヤバい内容だったー!

(それ、人間としていろいろ終わってるじゃん)
『嫌なら9回死ぬのじゃ。そうすれば能力は一個ずつ妾に戻ってくるし、お主の失ったものも一個ずつ戻ってくる』




 ………………………うん、ちょっと整理しようか。

 今の私は、(原理はわからないが)九尾の狐をぶん殴ったせいで彼女の力を99%自分の体に取り込んでしまっている。

 力を吸い取られた九尾の狐は、なぜか狐ではなく黒猫の姿になってしまい、私は力を得たことで9つのものを失った。

 失ったのは視覚、聴覚、味覚、臭覚、触覚、言葉、死への恐怖、残酷行為へのためらい、人に対する優しさ………。

 ………どこのサイコパスだよ。後半三つは人間として絶対に失ってはいけないものでしょうが。

 ……まあ失ってしまったものは仕方ない。

 それで、9つのものを失った代わりに、私は9つの能力を得ている。

 膨大な妖力、多彩な妖術を操る才能、千里眼、順風耳、驚異的な再生能力、言語チート、永遠におなかがすかない、永久に疲れない、究極の頭脳。この9つだ。

 まあ、半分ぐらい私が失ったものと相対してるんだけどね。千里眼とか渡されても目ぇ見えないんだから意味ないし。

 そしてトドメに、私は9回死ねるチャンスをもらってしまった。九尾の狐の性質をそのまま受け継いでしまったのだ。

 しかも私が一回死ぬごとに、今持っている9つの能力が一個ずつ減り、失っている9つのものが一個ずつ戻ってくるという。

 文字通り、真人間に戻るには9回死なないといけない。

 以上、現場の御影 雫(みかげ しずく)でした。




 ちょっと九尾の狐の能力がありがた迷惑すぎるんだけどーーーー!?
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