君に、会いたい
「信じられないよ、もう」
目を合わさぬまま振り返り、早足にその場を去った。






万智は、アメリカの大学で建築を学びたいと言って、20歳の時行ってしまった。


お互い夢を追いかけようって、笑顔で送り出した。


寂しいなんて言ったら、その勢いで行かないでと言ってしまいそうだから、言えなかった。


春に旅立って、夏秋が過ぎて冬。

アメリカに会いに行った。

会えてとても嬉しかったのに、会った瞬間、
何かが違うと思った。違和感。



すぐに分かった。万智が通っている大学を案内してくれた時、
図書室で話してたあの女の人…
たまに目で追ったり、2人の視線が重なったり


何かが違うと思ったのは、
そうか、
そうだったんだ。



万智の気持ちが、
離れていっていること。




日本に帰る日、万智に別れを告げた。


「私、そんなに鈍感じゃないんだ。万智、分かってるよね?」


自分ではクールに言ったつもりだったけど、きっと悲惨な顔をしていたと思う。


そのままバイバイと言って帰った。
その時のことは、何だか涙で曇ってて、あまり覚えていない。



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