偶然は運命的で必然的だった
第2章パラレルワールド
「んー……」
薄く目を開けた。
ぼやけていた視界は少しずつはっきりしていく。
真っ白な部屋。
全然好きじゃないにおい。
周りを見渡すとそこは病院の個室のようだ。
あぁ…好きじゃない薬品の匂いで包まれている。
左手を重たく感じてそっちに視線をやると
「…?!?」
私の大好きな人が私の手を両手でぎゅーと包み込んで寝ていました。
「先輩?先輩?」
「んー…芹花ちゃん!?」
先輩は私の顔を見るや否や驚いた表情をして安心したような表情をした。
あ…私の大好きなちょんまげの眼鏡だ…。
「あの…」
「あ、すまん!」
そういって私の手を離した。
まだぼーっと暖かい。
…熱い?。
「私どうしてここに?」
「お前、夏期講習の途中で倒れたんやで!?」
夏期講習?
そういえば涼しい…蝉の音も聞こえる。
蝉?
「へ?」
「へ?やなくて。脱水症状と熱中症で全然、目覚まさへんから心配したんや」
目をそらしてそう言う。
頬がなんだか赤い気がしたのは私の見間違い?
「夏?」
「ん?」
「いま季節は夏ですか?」
「何言ってんの、熱中症で頭おかしくなったか?」
先輩はくすくす笑ってデコピンしてきた。
「いたぁぁい!!」
「ちょっと売店行ってくるわ」
先輩はお財布を持って走るように行ってしまった。
先輩の声が震えてるような気がした。
カーテンを開けてみると雲一つない空と
太陽が、夏を私に教えていた
ふと床を見たら落ちていた雫。
先輩が泣いていた?
起き上がろうとしたら右足のふとともがひどく痛んだ。
私はベットの上でうずくまった。
少し大きかったズボンをめくりあげてみてみると痣があった
≪299≫
全く見覚えのない数字の痣。
いまの私にはそれが何を意味するのか全く分からなかった。
ケータイ画面をつけてロックを解いて日付を見た
「嘘……」
私がいた今日は2007年7月14日でした。
しばらくして先輩が帰ってきた。
「もうすぐで退院できるって!ほらこれ飲も!」
先輩はいちごミルクを買ってきた。
「いちご!!」
私もいちごが大好きだ。
もともとはブドウが好きだった。
でも先輩の好きを知りたくていつの間にか飲んでいたらこの味が好きになった。
「かんぱーい!!」
勢いよく飲みだす先輩と、ゆっくりゆっくり飲む私。
しばらく続いた沈黙。
「これ食べるか?」
先輩が勝ってきてくれたのは私が大好きなチョコチップクッキー。
「おいしい♪」
私は少し感じた異変を口にせず先輩の近くにいるこの時間を楽しんだ。
「あのさ…」
クッキーが残り少なくなったとき先輩が口を開いた。
「なんですか?」
「ごめん、死んだかと思った」
先輩がまっすぐこっちを見てる。
「ん、なんですか」
「こっち向いてくれへんかな?」
「無理です」
先輩がの体温を近くに感じるごとに俯いていく私。
「なんで?」
先輩がじわりじわり間合いを詰めていく。
な…なんでって…。
先輩がつめてくる距離にギュッと目を閉じた瞬間目を開けられなくなった。
ぎゅっと痛む心、上昇していく体温。
「ほんま、心配させんなや」
初恋の味は甘いいちごミルクの味だった。