想いはトクベツよ!
未来真っ暗の予感
坂梨シエナは途方にくれていた。

大学の受験会場に来てみたら、受験日は昨日だったのだ。


「うそよ・・・うそだといって。
ここしか、余裕で受かると思ってこの大学1本にしぼってたのに。」


父が亡くなったあと、家業を引き継いだ兄になんといえばいいのか、頭が痛い。

そう、兄に言ってしまったのだ。


「私には簡単すぎる受験問題なの。
でもね、興味をひくサークルがあるし、大学生としての思い出を作る場所としては最適なところだと思うわ。
先生からも太鼓判をもらってるし、心配いらないわ。

ああ~待ってる時間がめんどくさい。早く受験なんて終わらないかしら・・・。」


冷や汗が顔いっぱいに出てはあごに伝ってくる。
兄にあれだけ偉そうに言ったのに。

しかも姉は近々、政略結婚をするときいた。
そう、父が亡くなって家業である自然食品を扱う店は、現在ちょっと経営が苦しいらしいのだ。
工場で特殊なレタスを栽培しはじめ、実験ではうまくいったが、許可だの機械の設定に時間をとられてしまい、スタートが遅れてしまった。

もうかなりの売り上げをあげていなければいけないのに、まだそこまで達していないのだ。



結局、あれこれ考えてもいい知恵が出てくるわけもなく、シエナは帰宅した。
家では姉のナスノの準備が派手に行われていた。


「叔母様!どうしたの・・・この騒ぎ!」


「何をいってるの、あなたのお姉さんはどこに嫁ぐと思ってるの?
坂梨食品の親会社ともいえる高井グループのCEOの奥様になるのよ。
地味な準備しかできないとあっては、この先ナスノが肩身狭くしてなきゃなんないじゃないの。」


「あ・・・大変なんだぁ・・・お姉ちゃん。」


「あんただってもう大学生なんだから、大人らしくナスノを祝福してあげなきゃね。」


「う。うん・・・。」

(困ったなぁ。この状況でとても受験日間違えたなんていえないよね・・・。)




夕飯を終え、しばらくするとナスノがシエナの部屋にやってきた。


「シエナ・・・あんたもしかして・・・受験失敗したの?」


「えっ・・・えぇ!!あの・・・その・・・いろいろとわけが・・・」


「やっぱりそうね。受験は昨日だったんでしょう?」


「どうしてそれを!!」


「見つけちゃったのよ。居間の観葉植物のところに封筒があったから。
受験の諸注意が書いてあって、日付が昨日だったから・・・あんたが今日出かけて行ったのを見てね。」


「ごめんなさい!!私としたことが、受験日を間違えたの。
ごめんなさい!!お兄ちゃんには・・・いずれわかっちゃう。どうしよう。
こわいよ。どうしよう・・・お姉ちゃん!」

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