想いはトクベツよ!
司はすぐにシエナのところに行き、部屋のドアをあけると上半身裸のシエナが目を見開いていた。

「あ・・・」

「きゃぁああああ!」


「すまない!」

ソファの裏に背に座り込んだ司はそのままで口を開いた。


「今日、岩場まで泳いだってきいたんだ。
そんな危険なところまでいかなくてよかったのに。」


シエナは慌てて服を着ながら

「だって暇だったし、子どもたちは私でもできるって教えてくれたんだもん。
それに、お魚がなかったら司タンが・・・えっ・・・つかささ・・つかさタン・・・言えない。どうしよう。」


「く、くっ。あはははは。
ほんとに君って人は、俺は注意をしにきたのに、笑わせてくれるね。
言いにくいなら無理にさんなんてつけなきゃいい。
つかさ・・・と呼べばいい。」


「でも、目上の人には・・・」


「いいんだよ。シエナは俺の奥さんなんだし。
俺だけシエナと呼び捨てにして、司さんって言われるのもエラそうだし、かといってあなた・・・ていわれると自分が年老いた気分になる。
つかさでいい。
だが・・・岩場なんて大きな波がきたら恐ろしいところに、海に慣れない君がいくものではない。
いくら泳ぎに自信があっても、それはおだやかなプールでのことだろ。

君の顔に傷でもつけたら貴樹からなんといわれるか・・・。
俺は君の家の経営や社員を守ることはするが、君についてはお金で買ったわけじゃないんだ。」


「えっ・・・?だって坂梨家の娘ならいいって。」


「そうなんだが・・・俺は。」


司はソファの陰から飛び出して、シエナを抱きしめて叫んだ。


「俺の知らないとこで危険なことはしないでくれ。
ちゃんと、これからはちゃんと君も俺の行くとこに連れていくから・・・勝手なことはしないと約束してほしい。
もう、これ以上なくしてほしくないんだ。
君の記憶も・・・傷も・・・泣かせたくないんだ。」


「どうした・・・の?
記憶がどうかした?私がどうして泣くの?」


「い、いや、何でもない。
とにかくだ・・・危ないことはしないでくれ。」


「う、うん。ごめんなさい。」


司が青白くなってつらそうな顔をしている。
シエナは思い出せない記憶にいったい何が隠れているんだろうかと不安に思った。
財産と企業を守るための結婚だったのに・・・昨日まで憎まれ口ばかり言い合っていたはずなのに。

今どうして、こんなに大切にしてくれるの?
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