想いはトクベツよ!
しばらくして司はシエナをすっと押して距離をとり、小さな声で「ごめん」とつぶやくと、自分の寝室へといってしまった。


シエナはポカーンとその場に立ち尽くしていた。

しかしわかったことがある。

シエナの消えた時間の中に司が存在していて、何かを隠している。

それはシエナを泣かせるようなこと。


(私はいったい何を忘れてしまっているのかしら。
話してくれる素振りはぜんぜんないし、私自身が思い出すしかないんだわ。)



翌日、どういうわけか司は昨日シエナと仲良くなった子どもたちをバーベキューパーティーに招待した。


「シエナ!来たよ。」

「シエナってほんとに主様のお嫁さんなんだね。」



「うん、そうなの。って昨日そういったじゃない。」


「だって主様はもっとおじいさんだとばかり思ってたんだもん。
今まで会ったことないし、父ちゃんにきいても挨拶されたことはあったけどどんな人か忘れたとかいってさ。」


「えっ!じゃあ、ここに来るのも・・・」


「うん、はじめてだよ。」


お互いにとくに気にするわけでもなく、昼食をいっしょにとって食後にサーフィンを楽しんだ。

シエナは海岸でみんなの様子をながめて楽しんでいた。


司がサーフィン嫌いではないことにおどろき、地元の子どもたちに劣らないほどなじんで遊んでいることにも驚いた。



「はぁはぁ・・・さすがに子どもたちの元気には対抗できないな。
運動不足を痛感させられるよ。ああーーー!」

司はシエナの前でバタッと倒れ込んだ。


「子どもたちからきいたんだけど、子どもたちと会ったのは初めてなんですって?
どうして昨日、私が子どもたちと遊んだのを咎めたくせにこんなことしたの?」


「子どもになればシエナが優しくしてくれるんじゃないかと思って。」


「えっ・・・ぷっ!何それ。
私より9つも大人のくせに。やだぁ。」


「フン・・・そもそもハネムーンなんて計画はなかったんだ。
休みをとるだけでも、大変だったのに。」


「あの・・・もしかして私のために、ここに連れてきてくれたの?」


司はそれ以上何も話さなかった。


「私ね、歓迎してもらえないと思ってた。
いきなりハネムーンっていうから食事以外は部屋に軟禁状態なのかって思ったり。
でも本当は、私が楽しめるように考えてくれたんだ。ねっ。」


沈黙は続いている。
けれど、シエナはなんとなく司がおだやかな笑顔をみせた気がした。
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