想いはトクベツよ!
翌日、朝から司の姿が見えなかった。

不安になったシエナは母屋の中を歩きまわっていたが、それでも司は見つからない。

庭に出たシエナは庭師のおじいさんからいくつかの花を持って研究室へいったという情報を得ることができた。



「研究室なんてあるんだ。そういえば、ナスノの持っていた薬。
あれも作ったのは司だった。

司は実業家になる前は、大学の研究室で主に花からポプリ。そして香水。それから栄養剤などを作っていたらしい。


(もしかして私は実験されてしまうのかしら。実験動物のかわりなの?)


そんな不安な気持ちのまま庭のベンチに腰をおろしていると、司が走ってやってきた。


「どこにいってたの!私はここがどんなところで、あなたが何をしてるかもわからないのに。
出かけるなら予定をいってから出かけてよ。

おかげで半日も私は・・・」


「ごめん!そんなに時間がたったとは気づかなくて。
申し訳ない!!朝からちょっと思い立って・・・作ってみたんだ。
これ使ってくれないか?」


司はシエナの目の前に小さな緑色の小瓶を差し出した。
ほんのりと瓶から甘くてさわやかな香りがする。


「これって香水?」


「ああ。ここへ来て、私のものが何もないのにって怒っていただろ。
だから、君が気に入ってた庭の花を調合して作ったんだ。
これは商品化していない。
俺がこの世でたった1つ。たった今できたばかりの、君の香水。
そうだなぁ・・・シエナの居場所なんて名前じゃ、変かな。」


「私の・・・私のために?
何だろう。とってもうれしいのに・・・なんか切なくて物悲しい気がする。」


しばらくシエナの言葉が途切れ、シエナが自分の頭を押さえるまでにそんな時間はかからなかった。


「シエナ!どうした・・・?頭が痛いのかい。
シエナ・・・?シエナ・・・!!」


「いやっ!触らないで。
ううん。私・・・私は・・・あなたに親切にしてもらう資格なんてないんだわ!!」


「シエナ・・・。思い出したんだね。
けど・・・俺は・・・君に嫌われても仕方のないことを・・・」


「私・・・お兄ちゃんの話をきいちゃったの。
西岡亨くんのお姉さんとお兄ちゃんが電話で・・・あの事故のこと。
亨くんが私が病院に運ばれてすぐに息をひきとったって・・・。
すでに、出欠多量で重症だった亨くんは、あなたが私を迎えにきてくれたとこをみて安心して・・・逝ったって。」


「あ・・・。」
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