想いはトクベツよ!
シエナは記憶が消えた直前の記憶について話し始めた。
司の兄だったという種明かしのせいか、落ち着いて話すことができた。

見た目ひどい司のことが気になって、こっそり部屋の中をのぞいたシエナはショックを受けた。

やせ衰えた司(じつは兄の剛)といっしょに一糸まとわぬ姿の女性の姿があった。

眠る司の隣で裸の女が横たわり、司の背中や肩をさすっていた。


残り時間を全部自分との時間で埋めるようなしぐさだった。


気がつくと、自分の部屋で泣きつかれた子どものように涙をぬぐいながら何をしてたんだっけ?という状況になっていた。



(そうか・・・兄貴の姿にではなく・・・女と寝てた俺に?
えっ?待て待て。シエナの見てたものは俺と見知らぬ裸の女か。)


「君は俺が裸の女とベッドで寝ていたらショックだったということなんだな。」


「えっ!!あ・・・でも、あの・・・私はひどいこと言ったから。」


「そんなことはきいていない!
シエナは俺が好きなのか?
どうした?返事するんだ!」


シエナは真っ赤な顔をしてコクンと頷いた。


「あははははは。そっかぁ!
ごめん、ごめんな。シエナ。
ずっと俺のことで心を痛めていたんだよな。

ふふっ・・・ははは。」


「なんでそんなに笑うの?」


「ごめん!うれしいんだ。
シエナに嫌われてると思ってたから。

そんなに思ってくれてたなんて、俺は幸せ者だなって。
うれしいよ。
早くもどってくればよかったよ。
俺は臆病者で卑怯者で、君の大切な友達を見捨てたひどい男だと思われているんだって思ってた。
やっときいた君の情報は、俺のせいで記憶までなくしたって。
もう前に立つこともないと思ってた。

けど、貴樹の会社がピンチだっていうから・・・ナスノを嫁にもらうしかないかって思ったんだが、花嫁が君になっていてびっくりしたけどうれしくて。」


「うれしいと思ったの?」


「ああ。俺は学生のときから君の顔を見るために貴樹とつきあっていたといってもいい。」


「うそ・・・!」


「それが嘘じゃないんだ。シエナはこんなこというとひいてしまうかもしれないが。
ロリコンだといわれたら悲しいけどな。

ナスノより優しくてかわいくて、とてもまぶしかった。
ずっと眺めていたくなるかわいい子だった。」


「そんな・・・そんなこと。」

2人は少し前の出来事の歪みをすべて正すことができたと思った日となった。



< 19 / 20 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop