俺様副社長のとろ甘な業務命令
普段、車を運転することがないから道には詳しくないけど、行きとは違う道で帰っていることは何となくわかる。
さっき、鎌倉なんて文字が目に入ってきたけど……。
車はやがて、開放的な海沿いの道へと出ていく。
「この辺りって、どこの海になるんですか?」
窓の外に広がる冬の海は、オレンジと濃いピンクが混じり合った絶妙な色合いの空を載せている。
「七里ヶ浜だ」
「あ、江ノ島の方ですね」
「江ノ島はもう少し先になるけどな。近くではある」
ちょっと遠回りな気もするけど、ドライブがてらなのかもしれない。
そんなことを思いながら海を眺めていると、車は海岸線を外れて小道へと右折した。
またどこかに寄り道だろうか?
そんな疑問を抱いている間に車は道を入ってすぐにあった駐車場へと入っていく。
お店などの敷地内にある駐車場というわけではない、十台ほどが停められるただの駐車場。
エンジンを切ると、副社長は「行くぞ」と言って車を降りていく。
「また寄り道ですか?」
出た車から去っていく背中に問い掛けながら、ふと、駐車された他の車がどれも高級車なのが目に入る。
駐車場を出てすぐ左手に煉瓦とアイアン造りの可愛らしい門があり、副社長はそこに向かって歩いていった。
門の先はその先に公園でもありそうな小道の階段になっていて、イングリッシュガーデンを思わせるオシャレな造りになっている。
この上に何があるのだろうか。
また説明なしに連れて行かれているけど、漂う雰囲気がこの先に素敵な何かがあることを予感させていた。