俺様副社長のとろ甘な業務命令
仕事とはいえ、誕生日に副社長と一緒だったことはさすがに話す勇気がなかった。
何かと勘の働く美香子のことだから、根掘り葉掘り追及されて、芋づる式に全部を話すことになってしまいそうで怖い。
別に、隠すような疚しいことは何一つないんだけど……。
「ちょっと嘘でしょー? そんなんだったら私お祝いしたのに」
「ありがと。いや、何か先週も忙しかったしさ、ぐったりだったっていうか」
「いやいやいや、誕生日だよ?! 一年に一回の日に何言っちゃってんの」
「まぁ、それはそうなんだけどさ……」
「あ、橘さんは? ゆずの誕生日とか、気にしてくれそうじゃん」
誕生日の朝、電話をくれた颯ちゃん。
仕事が終わったら連絡すると約束していたけど、副社長との想定外の時間を過ごして、連絡ができたのは陽もすっかり落ちてからだった。
あのサプライズのディナーからの帰りの車でハッと思い出し、まだ時間がかかるとメッセージを入れたら、遅くまで仕事で疲れてるだろうし、日を改めようと返信がきていた。
家に着いてから電話をかけてみたけど、タイミングが合わなかったのか話すことはできなかった。
せっかく気に掛けて連絡をくれていたのに、悪いことをしたと思う。
今度会ったら、ちゃんと謝らないと……。
「連絡はくれたんだけどね、ちょっと都合が合わなくて」
「都合って、家でゴロゴロしてるのに何の都合よ?」
「あー、何と言うか」
「ゆずちゃん届いたよー、お待ちかねの」