俺様副社長のとろ甘な業務命令
お昼からのプレゼンを終え、今日は夕方から一件外回りの仕事があった。
休む間も無く会社を飛び出し向かった先は某出版社。
人気女性誌で新商品の特集を組んでもらえる話が上がり、その打ち合わせに一人出掛けていた。
帰社してからはお昼のプレゼンの企画コンテを見返したりして、あっという間に就業時間を過ぎていた。
左右の席の美香子と笹野先輩は定時過ぎに「お先に」と揃って帰っていき、あれから軽く二時間は経っている。
オフィス内を見渡すと、あと何人かの残業組の頭が見えた。
明日も広告デザインの件で朝から外回りの仕事が入っている。
ここら辺で今日は切り上げて退社しようとパソコンをシャットダウンした時、デスクに置いていたスマホがぶるぶると震え始めた。
私を呼び出していたのは副社長からの着信だった。
そういえばもう帰ったのだろうか。
いつも先にオフィスを出る時は一言掛けていくけど、今日はそれがなかった。
そんなことを思いながら電話に出る。
「はい、斎原です」
『お疲れ。まだ、社内にいるか』
「あ、はい。ちょうど今から退社しようと思ってたところです」
『そうか、じゃあちょうどいい。今、一つ上の階にいる』
「え……販売促進部、ですか?」
『その奥の部屋だ。来ればわかる』
「奥……わかりました、今から行きます」
パソコンの画面が真っ暗になったのを確認して席を立つ。
まだデスクに向かっている面々に「お先に失礼します」と声を掛け、オフィスをあとにした。