俺様副社長のとろ甘な業務命令
『B.C. square TOKYO』ミドルフロアの十一階から十三階が、うちの会社『CHiC make tokyo』のオフィス。
真ん中の十二階に私の在籍する広報宣伝部があり、下の十一階が営業部、そして十三階に販売促進部がある。
十三階に副社長はいると言っていたけど、何をしているのだろうか。
エレベーターで一つ上階へ向かった販売促進部のフロアは、残業する人の姿もなくオフィスは眠りにつき始めていた。
オフィスを一望してから、奥にいると言われたことを思い出す。
オフィスフロアから奥へと進むと、確か使われてない部屋があったけど、そんなところで何して……。
「え、いつの間に……」
久しぶりに見た使われていなかった部屋は、いつの間にか『副社長室』とプレートがさされていて、副社長の部屋へと姿を変えていた。
最近、外出以外で急に姿が見えないことがあったけど、ここにいたのかと思うと合点がいく。
「失礼します」
ノックをして扉を開けると、そこはすっかり立派な重役の部屋と化していた。
知らないうちに内装の工事も入ったのかもしれないと思うほど。
手前には応接の対面ソファーがあり、奥には重厚なデスクと革張りの椅子が見える。
副社長はそこに掛け、まだ仕事をしているようだった。
デスクの向こうにはすっかり暗くなった空と、残業をする人がいるオフィス街のネオンが綺麗に浮かび上がっていた。