俺様副社長のとろ甘な業務命令



「出来栄えはどうだ」


私の視線が注がれる先に気付いたのか、副社長は穏やかな笑みを浮かべる。


「はい……上出来だと思います」


商品が手に取れる物となったことの喜びは計り知れない。


想像してみる。

店頭に商品が並び、お客様が手に取る姿を。

使ってみたいと、大切なお金を出して購入してくれることを。

そして気に入ってもらえ、愛用品になってくれたら、作り手としてこれ以上の幸福はない。


「お客様に手に取ってもらえるまで、あと少しですね」

「あぁ、そうだな」

「あとは、手に取ってもらうための仕上げの仕事をしっかりやる。まだまだ頑張らないと」


意気込んだ発言をした私を副社長はフッと笑う。

「そこで満足しないのが斎原だな」なんて言いながら椅子から立ち上がると、そのままふらりと窓の外の景色を眺めにいった。


「そのサンプル、持って帰るか」

「え、いいんですか?」

「俺が持ってても意味がないからな。持て余すだけだろ」

「そうですけど……じゃあ、遠慮なくいただいていきます」


デスクに置かれたコスメは、どれもボディが光を受けて煌めいていた。

その中からアイシャドウのパレットを手に取り開いてみる。

現れた六色のアイカラーは、まるで綺麗色のマカロンを詰め込んだように並んでいて、改めてスイーツのようで可愛いと見惚れてしまった。


「持っていく前に一つ、俺じゃ試せないこと、斎原で試してみてもいいか?」


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