俺様副社長のとろ甘な業務命令
「あながち……間違ってないかもな」
もう言われている言葉の意味なんてわからない。
強制的に合わされた目に、髪をかき上げるように触れた指に、緊張は極限近くまで達していく。
いつも微かに感じていた香水のいい香りをはっきりと意識しながら、どうしてこんな風に見つめられているのか必死に考える。
逸らされない副社長の目に吸い込まれそうになっていた、そんな時だった。
止まっていたような時が動き出すかのごとく、私を見下ろす目前の口元が妖艶な笑みを浮かべる。
そして、その意味深な微笑が近付くのを感じた。
「っ……!?」
自分の身に何が起きているのか、一瞬頭が真っ白になってよくわからなかった。
でも次の瞬間、ハッと覚醒する。
視界いっぱいの近すぎる距離感。
額にかかるサラリとした髪の感触。
そして、唇に触れる生暖かいもの……。
目を見開いたまま抵抗も忘れて固まっているうち、触れていた唇がそっと離れていく。
目が合う程度に顔を離した副社長は、またその唇に妖しい笑みを浮かべて見せた。