俺様副社長のとろ甘な業務命令
「あ、颯ちゃん、あの」
「佑月が料理本コーナーにいるとはな」
颯ちゃんはからかうようにそんなことを言いながら近付いてくる。
私の手にしていた本にチラリと視線をよこした。
「颯ちゃん、この間はごめんね。連絡くれたのに」
誕生日に連絡がつかなかった後、あの日のことを謝る機会が訪れなかった。
会ったら謝らなきゃと思っていたら、こんなに時間が空いてしまっていた。
「あぁ、別にいいよ。仕事だろ? しょうがないよ」
「う、うん……」
仕事と言ったらそうだったのかもしれないけど、何だか後ろめたいような気分になってしまう。
「あ、颯ちゃん、この後って予定ある?」
「え、いや、特にはないけど」
「じゃあ、夕飯一緒にどうかな? この間のお詫びってことで、ね?」
「お詫びって、別にいいからそういうの」
「それじゃあ私の気が済まないから。ちょっと待ってて、お会計してくるから」
強引な感じで話をまとめ、小走りで手にしていたレシピ本をレジへと持って行った。