俺様副社長のとろ甘な業務命令
ガクッと肩を落としてトボトボ歩く私を、颯ちゃんがハハハと笑う。
今日もまた、颯ちゃんはわざわざ家までの帰り道を一緒に歩いてくれている。
「何でそんなに沈んでんだよ」
「だって……これじゃあ今日誘った意味ないんだもん」
この間の約束が駄目になったお詫びにと、今日は私がご馳走させてもらうつもりだったのに、お会計で一悶着。
普通に支払いをしようとした颯ちゃんを必死に制してお金を出したのに、それを引っ込めてさっさと自分のお財布からお金を払ってしまった。
その場で食い下がったものの、店員さんが苦笑いするわ、颯ちゃんに「騒ぎすぎ」と怒られるわで仕方なくお金を引っ込めた。
そんなわけで帰り道の今ぶーたれている。
「別にいいじゃん。元々、誕生日に誘ったのは俺なんだし、今日その代わりだったと思えば」
「そうかもしれないけど……何だかなぁ」
すっかり冬の冷たさになった空気が、ちょっと酔った顔にちょうど心地良い。
今日は珍しく、二人してお酒をお供に食事をした。
颯ちゃんとごはんを食べる時、大抵がお酒は入らないのが定番のスタイル。
お互いに帰ってから仕事をすることがあったりで、飲まずに食事だけしてサクッと帰ることが多い。
だけど、今日はそれもお互いないのがわかり、飲もうということになった。