俺様副社長のとろ甘な業務命令
ドアを開いて電気をつけて、やっぱり、と慌てる。
「ごめん、やっぱ酷いかも。あ、上がって」
バタバタと部屋へ入っていき、目に付く散らかっているものを急いで片付ける。
脱ぎっぱなしの部屋着をベッドの中に忍ばせ、床に広がっていた雑誌をまとめてみたものの、生活の拠点であるローテーブルの上はコスメやら仕事の資料が山積みになっていて、とてもお茶を出せる状態ではない。
とりあえずざっくり集めて床に寄せて置いていると、入ってきた颯ちゃんが物珍しそうに部屋の中を眺めていた。
「あんまり見ないでおいて。ほんと散らかってるし」
「大丈夫。想像してたより綺麗だったから」
「え、そうなの?」
「さすが、女子の部屋って感じだな」
「まぁ、化粧品とか多いからね……あ、適当に座っててね、狭いけど」
幼馴染みと言っても、やっぱり同性じゃない颯ちゃんに部屋をじっくり拝見されるのはどこか照れ臭い。
最低限お茶を出せる環境を作り、早速キッチンへと入る。
ホーローケトルを火にかけたところでカウンター越しに部屋へ目を向けてみると、颯ちゃんはカバンをおろしてコートを脱いだところだった。