俺様副社長のとろ甘な業務命令
ピンチを乗り切る仕事愛
いよいよCM撮影日を翌日に控え、広報宣伝部内は朝から普段よりどこか慌ただしい空気が漂っていた。
各方面の最終確認などに追われながら、時計を気にする暇なく時間が過ぎていく。
やっとひと段落して手が空いた時、仕事から離れた頭が考えるのはあの夜の颯ちゃんのことだった。
あれから数日が経つけど、颯ちゃんにはまだ会っていない。
次に会ったら何を話したらいいのか。
それ以前に、どんな顔をして会えばいいのかも未だよくわかっていない。
「わっ!」
デスクについたままぽけーっとしていると、いきなり紙の束で頭を叩かれた。
ガバッと椅子ごと振り返る。
見上げた背後に立っていたのは、小首を傾げて薄っすら笑みを浮かべている副社長だった。
ぼんやりしていた頭が一気に冴える。
「何ボーッとしてるんだ」
「すみません……」
ちょっと考え事を、というのは言わないでおく。
目を伏せた私の顔を、副社長は追及するかのように覗き込んだ。
「何か悩み事か」
「えっ! 別に、そんなんじゃ」
うっかりわかりやすい反応をしてしまうと、副社長は全てお見通しと言わんばかりに鼻で笑ってみせた。
「聞いてやりたいのは山々なんだけど、今からアメリカの本社に行くことになった」
「はい……えっ?!」
「どうしても来てくれと連絡があって、昼には発つ」
「え、じゃあ明日の撮影の立会いは……」