俺様副社長のとろ甘な業務命令
「あぁ、スケジュール的に間に合わないと思う」
「そんな……」
あまりに急な話に、つい気の抜けた声が出てしまっていた。
大事な日を前に、何故このタイミングで?
と思ったものの、そんな日の前日だろうと渡米しなくてはならないもっと重大な仕事が舞い込んできてしまったのだろうと思い直す。
「そういうわけで、悪いが明日のことはお前に全て任せることになるから」
「はい……」
仕事を一任される、その責任の重さに急に不安な気持ちが押し寄せてくる。
滞りなくやってきたはずなのに、明日現場に副社長がいないということが、こんなにも心細く感じるなんて。
「何だよ、その不安そうな顔は」
「えっ、あ、すみません」
「いつもの斎原なら、俺なんかいなくても全然大丈夫ですって感じだろ?」
言われてみればその通りだ。
副社長がうちの部にくるまでは、新商品のプロジェクトは主に私が責任者として進めてきていた。
だから、ちょっと副社長が席を外していたって、なんてことないと思われるかもしれない。
だけど一緒に仕事をしていくうち、それは明らかに変化していった。
たくさんのアイディアをもらったり、足りないところをフォローしてもらったり、副社長がいなかったら、きっとここまでの仕事はできなかったと今は思っている。
いつの間にか信頼し、仕事のパートナーとして副社長が必要な存在になっていたこと。
出会った頃はこんな風に思うようになるなんて想像もしていなかった。