俺様副社長のとろ甘な業務命令


「まぁ、明日は見守るだけだからな。CM撮影の見学、くらいの気持ちでいればいい」

「はい……」

「もし何か問題があれば連絡してこい」

「わかりました」


それでもまだ不安な気持ちをスッキリ消せないでいると、副社長は私の頭にポンと手を載せてくる。

ドキッとしながら目線を上げると「大丈夫だよ」と微笑まれた。


迷った時や困った時、もう何度もこの無敵の笑みに救われてきた。

私の気持ちを汲み取って、副社長はいつもこうやって勇気付けてくれる。

だからいつまでも、冴えない顔なんてしていられない。

安心して向こうに行けるよう、大丈夫ですの気持ちを込めて笑顔を作ってみせた。


「いつもの斎原の顔に戻ったな」

「はい。こっちは任せてください。副社長も、お気を付けて」


私の力強い返事を聞いた副社長は、「頼んだぞ」と言い残し足早に立ち去っていく。

その頼もしい背中を目に、心の中で「よし!」と気持ちを引き締めた。


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