俺様副社長のとろ甘な業務命令
「あぁ、あと……撮影頑張るから、時間を作ってほしいと言われた」
「えっ!」
ははー、なるほど……。
だから機嫌が良くなったってわけか、納得。
「交換条件出されたってわけですね。じゃあ、しっかり約束は守らないと」
「いや、多分難しいと先に断わっておいた」
「難しい……?」
「アメリカの方に戻ると話した」
「え、その嘘大丈夫ですか? 今日帰ってきたばかりなのに、もしバレたら」
「嘘ではない」
「え?」
「近々あっちへ戻ることになった」
見ていた書類を綺麗にまとめた副社長は、何でもなさそうにサラリとそう口にした。
ドクっと心臓が大きく音を立てる。
「三ヶ月間ここにいる予定だったけど、少し早まった感じだな」
うちの部にやってきた日、確かに三ヶ月間ほどの研修という話だった。
でもそれが終われば、またアメリカの本社に戻るとは聞いていなかった。
「そう、だったんですか……」
「こっちにいる間は最終日まで今の仕事もやっていく。その後は今度こそお前に一任する形になるから」
その後も、副社長は淡々と仕事の話を続け、それに返事をしていた記憶は確かにある。
でも、何の話をされていたのかは曖昧で、よく内容は覚えていなかった。
副社長がいなくなる。
突然のその知らせが、私の頭の中をいっぱいにしていた。