俺様副社長のとろ甘な業務命令


意を決して今の気持ちを伝えようとした私に、颯ちゃんは思いもよらないことを口にした。

どういうこと?
そんな視線を受けた颯ちゃんは、私のよく知るいつもの颯ちゃんの顔をしていた。


「もちろん、佑月に対する気持ちは、嘘ではない。だけど……こんな風に佑月を困らせて、今までの関係までダメにするのは、やっぱり耐えられなくて」

「颯ちゃん……」

「って、今更撤回するのもって感じだけど。だったら言わない方が良かったよな」


さっきのウェイターさんがやって来て、グラスにスパークリングワインを注いでいく。

発泡するグラスの中味を見つめながら、慎重に返す言葉を選んでいた。


「そんなこと、ない。嬉しかったよ……颯ちゃんの気持ち。でも、何か……正直ホッとしちゃってる」


気持ちを伝えてくれた颯ちゃんに対して、どっちつかずで曖昧な、今までの関係でいたいなんてことを口にするのは、生殺しも同然だと思っていた。

そんなこと言ってしまったら、やっぱりギクシャクしてしまうかもしれないとも思った。


「困ったとは、思わなかったよ。だけど、今までの関係がどうなるのかと思ったら……怖かった」

「じゃあ……同じこと思ってたんだな、俺たち」

「うん……そうかもしれない」


話が一区切りしたような空気になり、颯ちゃんがグラスを手にする。

それに習ってグラスを手に取ると、カチンと軽やかな音がテーブル上に響いた。

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