俺様副社長のとろ甘な業務命令


「焦った、っていうかさ……佑月の誕生日の日。先越された上に、あの日、夜まで一緒だったんだろ? あの副社長さんと」

「えっ、それは、仕事で一緒にいただけで」

「休日に、あんな遅くまで?」

「それは……あ、でも、本当に何かあるとかなくて、ご飯はご馳走になったけど、でもっ」

「佑月、慌てすぎ」


弁解する私を見て、颯ちゃんはクスクスと笑う。


「だって、颯ちゃんが変なことばっか言ってくるから……ほんとに、何も」


否定の言葉を並べながらも、副社長のことで頭が占領されていた。


指摘された誕生日の出来事や、今も忘れられないあのキスのこと。

そして、明日が顔を合わせるのが最後だということも……。


「それに、明日で最後なんだ、一緒に働くの。明後日には、元々いたアメリカの本社に戻るの」


口に出して言ってみて、また複雑な感情が押し寄せた。

この気持ちは、一体何なんだろう。

また、副社長がいなかった頃の、前と同じ日常が戻ってくるだけ。

ただそれだけのことなのに、どうしてこんなにそればかり考えてしまうのだろう。


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