俺様副社長のとろ甘な業務命令
想いが繋がる最後の夜
「副社長ぉ! ほっんとに行っちゃうんですかぁ? 早すぎませんか?!」
すっかり出来上がってしまっている足立課長が、うぉんうぉん男泣きしながら副社長に絡んでいる。
その姿をグラスに口を付けながら眺めていた。
歓迎会をしたお店で行なわれる、早すぎる送別会。
急遽早まった副社長との別れは、広報宣伝部の誰もを悲しませていた。
副社長がやってきて、オフィスは確かに活気付いた。
華があるリーダーが去っていくことは、皆それなりに寂しさがあるのだと思う。
副社長と仕事をするのが最後の今日も、いつもと何ら変わらない一日を送った。
明日からは、こうして隣に副社長がいることもなくなる。
そう思いながらも、それについて何かを口にすることもしなかった。
副社長の方も同じで、全くいつも通りだった。
そんな調子だから、本当に明日にはもういないのだろうかと、疑う気持ちにもなった。
だけど一日の仕事が終わると、改まって副社長は私に言った。
「斎原と一緒に仕事ができて良かった。ありがとう」
と……。
その言葉を聞いて、副社長が本当にいなくなることを実感した。