俺様副社長のとろ甘な業務命令
「わざわざ悪いな」
見送りに出向いた私に、副社長はほんのり笑みを浮かべる。
最後になるかもしれないその姿を目に焼き付けていた私へと、副社長はそっと手を伸ばした。
髪に触れ、頬を滑り、大きな手は私の顔を包み込む。
「そんな顔するな」
涙が出そうになる目尻に優しく触れ、副社長はじっと確かめるように私の目を見つめる。
「副社長……」
震える声を絞り出した私を、副社長は自分の胸へと抱き寄せた。
抑えていた気持ちが溢れ出して、副社長の背に腕を回す。
ギュッと強く力を込めると、涙は決壊したダムのように止め処なく流れだしていた。
「副社長、行かないでください」
「斎原……」
「嫌です……行かないで……」
「また、いつか会えるから」
「いつかって……そんなの、嫌……」