俺様副社長のとろ甘な業務命令
「ゆずー?」
「副社長……」
「ちょっとゆーず、ねぇ、ゆずってば!」
「ん……? えっ?!」
呼ばれる声に目を開くと、美香子のどアップの顔が目に飛び込んできた。
テーブルに突っ伏していた体をガバッと起こす。
そこはさっきと変わらぬ送別会の席だった。
やだ……今の、夢?
「ごめん、私、寝てた?」
「ちょっと、この間は酔い潰れて今日は寝るとか、ゆずには飲ませらんないな」
ぼんやりする目で辺りを見回すと、みんなコートをハンガーから取ったり、帰り支度を始めている。
「何、何? 副社長って寝言言っちゃってたけど、夢でも見てたわけー?」
「え、嘘っ、違うよ!」
「残念ながらその副社長はお先に帰っちゃったけどねー」
「えっ……」
「明日、発つの早いんじゃない?」
「そう……。あ、いくらだった?」
置いていたバッグから慌てて財布を出し、今日の飲み代を美香子に訊く。
立ち上がってコートに袖を通していた美香子は「それが聞いてよ!」と興奮気味な声を出した。
「何か、副社長が出てく時に全員分支払っていったらしいよ。ヤバくない?!」
「えっ、嘘、全員分って……」
「ねー、驚くでしょ? 副社長の送別会なのにね」