俺様副社長のとろ甘な業務命令
「俺より先に言うな」
涙に濡れる目尻を拭い、その指は優しく頬を撫でる。
言葉を遮ったキスと、言われたその意味に戸惑いの眼差しを向ける私を、副社長は今度は正面からしっかりと抱き締めた。
「斎原……お前が好きだ」
副社長の腕の中で聞いた、低く囁くような声。
瞬きを忘れて耳を疑う。
「お前に興味を持って近付いた。だけど俺は、初めて会った時からお前に惹かれてたんだと思う」
思考回路が壊れたかと思うくらい、何が何だかわからなくなっていた。
副社長が、あの副社長が、私にそんなことを言うわけない。
そう思ってみても、心臓は痛いくらいに爆音を立てている。
「……冗談だよ、とか……嘘だよとか、言わないんですか?」
信じられなくて、確認するようなことをつい口にしてしまう。
意を決してした質問を、副社長は呆れたようにフッと笑い飛ばした。
「相変わらず可愛くないな」
「だっ、だって……副社長が、私に……そんなこと言うなんて」
「信じられないって?」
はい、と返事をしようとした私を、副社長はいきなり横抱きにする。
突然のことに「きゃっ」と声を上げてしまった私に、副社長は悪戯な笑みを浮かべてみせた。
「じゃあ、信じてもらわないとな」