俺様副社長のとろ甘な業務命令
「佑月……」
耳元で囁かれた、初めて呼ばれる下の名前。
いつも『斎原』と呼ぶ副社長の声がそう呼ぶだけで、キュンと心臓が震え上がる。
「何、か……副社長にそう呼ばれるの……ドキドキする」
高鳴る鼓動に包まれる中、そんなことを口にしてみる。
上体を起こした副社長は、きっちりと締めてあるネクタイを緩めると、悪戯に口角を吊り上げた。
その仕草にまたドキンとしてしまう。
「じゃあ副社長っていうの……今はやめとくか」
「え……?」
「俺の名前、知ってるだろ?」
再び重なった唇は啄むように触れ、やがて首筋や鎖骨へと降りていく。
キスを落としながら「ほら、早く」と急かされ、自然と漏れ出る甘い吐息に紛れながら、初めて「翔」と副社長の名前を口にしていた。