俺様副社長のとろ甘な業務命令
「おはようございます」
「あっ、ゆず、おはよう!」
今朝もいつも通り、私の声に隣の美香子が椅子ごとくるりと振り返る。
「おはよう。ごめんね、昨日は」
待っていてくれると言った美香子を置いて、一人お店を飛び出していってしまった昨日の送別会。
きっと変に思われたに違いない。
「いいっていいって、それより聞いて!」
昨日のことを咎めるよりも何か別の話があるらしく、ぴょんと椅子を立ち上がった様子に首を傾げる。
「何、どうしたの」
「斎原」
……え?
空耳、というやつだろうか。
背後から聞こえた声に、ピタリと固まっていた。
でも、見ている美香子の顔がパッと明るくなったのを目に、まさか、その思いで振り返る。
そこに立つ姿を見た途端、時間が止まってしまったような感覚に陥っていた。