俺様副社長のとろ甘な業務命令
「嬉しそうじゃないのは気のせいか?」
「違っ、嬉しいけど……ビックリしちゃって……」
じわじわと目の前に副社長がいることが現実味を帯びてくる。
確かめるように腕を回してギュッと抱き付いてみると、副社長は応えるように優しく抱き締め返してくれた。
「本物だ……」
結構本気で呟いた感想を、副社長は「何だそれ」と私の頭の上で笑う。
ようやく現実だと噛み締めたものの、ここが会社の会議室だということにハッとして慌てて体を離した。
「いつ、決まったんですか? 行かなくていいって」
「ああ、昨日お前が来た時にはもう決まってた」
「えっ?!」
しれっと何でもなさそうに言われて、思わず声がでかくなってしまう。
昨日って、そんなこと一言も……。
「じゃあ、何で昨日話してくれなかったんですか!」
「どうせ今日にはわかることだったからな。言わない方が、可愛くないお前も素直になると思ったし」
「なっ、何ですかそれ!」
「実際そうだっただろ。それに……」
離れた私の手を取り、また自分の元へと引き寄せた副社長は、その口元に不敵な笑みを浮かべる。
「その方が、盛り上がると思ったからな」
妖しい言い方で昨日の夜のことを言われ、ボッと顔が熱くなるのを感じた。