俺様副社長のとろ甘な業務命令



「やっぱり……まだ寝てるのかもしれない」

「何だそれ」

「そんなこと言われるの……信じられないから」


フッと息を漏らして「まだ言うか」と副社長は呆れたように呟く。

そして、腕を緩めて私の顔を覗き込んだ。


「昨日、十分わからせたつもりだったんだけど、まだ足りないってわけか」

「へっ?! いや、違います、そうじゃなくて」

「じゃあ、今日の仕事が終わったら…….」

「っ?!」

「たっぷり愛してやるよ」


触れるだけのキスをして囁くその甘い声に、体の奥がキュンとしてしまう。

真っ赤になっているであろう私の眉間をツンと押して、副社長は「返事は」と聞いた。



あの血の気の引く最悪な出会いから、こんな風に蕩けるような言葉を囁かれる関係になるなんて、あの日の私は一ミリも考えるはずなかった。


でも今は……。


「はい……」


あの日の私が知ったら驚くくらい、彼に落ちてしまっている。



あのルージュには、本当に不思議な力があったのかもしれない。


私と副社長を繋いだ、魔法のアイテムだったのかもしれない。






* Fin *


< 176 / 179 >

この作品をシェア

pagetop