俺様副社長のとろ甘な業務命令
「やっぱり……まだ寝てるのかもしれない」
「何だそれ」
「そんなこと言われるの……信じられないから」
フッと息を漏らして「まだ言うか」と副社長は呆れたように呟く。
そして、腕を緩めて私の顔を覗き込んだ。
「昨日、十分わからせたつもりだったんだけど、まだ足りないってわけか」
「へっ?! いや、違います、そうじゃなくて」
「じゃあ、今日の仕事が終わったら…….」
「っ?!」
「たっぷり愛してやるよ」
触れるだけのキスをして囁くその甘い声に、体の奥がキュンとしてしまう。
真っ赤になっているであろう私の眉間をツンと押して、副社長は「返事は」と聞いた。
あの血の気の引く最悪な出会いから、こんな風に蕩けるような言葉を囁かれる関係になるなんて、あの日の私は一ミリも考えるはずなかった。
でも今は……。
「はい……」
あの日の私が知ったら驚くくらい、彼に落ちてしまっている。
あのルージュには、本当に不思議な力があったのかもしれない。
私と副社長を繋いだ、魔法のアイテムだったのかもしれない。
* Fin *